英国一家、日本を食べる マイケル・ブース

日本料理というといま世界的に人気である。 ヘルシーというイメージがあって、どの国でも日本料理店が増えているという。 この旅行記は、英国人のフードライターが一家で日本料理を食べつくした記録である。懐石料理からラーメンまで幅広く日本料理を取り扱…

旗本の経済学 小松重男

お庭番だった川村修富の手留帳(日記)をもとにして彼の人生を追ったものである。 時代劇の影響で、お庭番というと何か忍者のイメージがあるが、実際は、幕府の役人の一人である。だから、スーパーマン的な活躍が無論あるわけでもなく、淡々と事務をこなして…

ぼくは猟師になった 千松信也

「りょうし」というと魚を獲る漁師のほうを思い浮かべる人が多いにちがいない。 わたしもそうであった。だが、この本の著者は、山中のイノシシやシカを罠で獲る猟師である。なんか猟師というと、いまどき猟師なんかやっている人がいるのかな、という半信半疑…

健康に生きる覚悟 森村誠一

ここしばらくは、森村誠一の小説をずっと読んでいる。 そんな中、小説以外のものも読んでみた。「健康に生きる覚悟」という高齢者になった作者自身の健康管理の本である。 高齢者による健康管理の本は、いろいろあり、今までも何冊も読んだことはあるから、…

考証要集 秘伝 NHK時代考証資料 大森洋平

時代考証の本である。 時代考証というと江戸期以前のものという印象があるが、昭和の戦争期のもののように比較的最近のものもある。NHKの時代考証の担当者の書いた職員向けのものがベースになっている。 これを読むと江戸時代のものが一番多いが、現在使…

退職金貧乏 塚崎公義

退職金貧乏というネーミングが読んでみるきっかけになった。 なかなか読者をひきつけるタイトルである。内容はというと、退職金を減らさないための運用術とでもいった内容だ。読んでいると、今までの類似の資金運用の本と基本的には、内容はそんなに変わらな…

人間の証明 森村誠一

森村誠一の小説である。作家生活50周年フェアで刊行されたものである。 いまは、作家としてデビューするチャンスは、いろいろと多いから、作家になることは、簡単だが、あり続けることは難しいといわれている。そんな中50年も第一線の作家であったという…

坂本龍馬の「私の履歴書」 八幡和郎

坂本龍馬といえば、幕末でももっとも有名な人物のひとりである。 いろいろな本が書かれているが、この本は、この虚像の多い人物の実像に迫ったものである。履歴書風に年代に沿って、真実の龍馬を確実な資料で追っていったものである。ただ、龍馬英雄史観に反…

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 村上春樹

村上春樹の一番新しい長編である。もう二年近く前に出版されているが、図書館の予約の順番を待っていたので、こんな時期になってしまったのだ。 読んでみると相変わらず、面白い。一晩で一気に読んでしまった。高校時代の四人の友人から付き合いを断られた理…

女のいない男たち 村上春樹

東京奇譚集以来の短編集である。 珍しく書いてある「まえがき」をみるとビートルズのサージェントペパーやビーチボーイズのペットサウンドのようなコンセプトアルバムを念頭に置いたとあった。だから「ドライブ・マイ・カー」とか「イエスターデイ」といった…

遊郭医光蘭闇捌き1 土橋章宏

暗い過去を持ち、医者をしている主人公が、吉原界隈で起きる事件解決を手伝うという物語だ。 何かテレビでやっていた必殺仕事人的な物語である。そういう意味では、既視感のあるものなので、あまり新鮮味を感じられないかもしれない。 だが、結構物語の展開…

西周夫人升子の日記 川嶋保良

西周というと幕末期から明治の人でいくつかの西洋の概念を翻訳したことでしか知らなかった。 例としては、芸術、理性、科学、技術などである。明治期にそういった今までになかった概念を日本語に翻訳できたから日本が発展できたというのはよく言われることで…

天下の副将軍 長山靖生

天下の副将軍というと水戸黄門を思い出す人が多いだろう。 だが、幕府の役職には副将軍というのはなくて、副将軍というイメージが定着したのは、江戸の中期だという。御三家とは言われながら、尾張、紀州に比べ、石高が少なかった水戸は、将軍を狙わない代わ…

日本史の謎は「地形」で解ける 竹村公太郎

歴史の本を読むのは好きだが、英雄史観とでもいうのだろうか、歴史上の人物にスポットライトを当てたものがほとんどである。 戦国時代も幕末もそうだ。そういう本は、読んでいて本当に楽しい。 だが、今回の本は、歴史というのは、地形という環境から影響を…

軍師の境遇 松本清張

以前大河ドラマでやっている黒田官兵衛を主人公とした物語である。 松本清張まで黒田官兵衛の小説を書いているとは思わなかった。推理小説だけでなく、歴史ものも得意の松本清張だから書いていてもおかしくはないのだが、それだけ黒田官兵衛は、松本清張にと…

潮鳴り 葉室麟

葉室麟の小説を読むのは、初めてである。九州の小藩の藩士の物語である。藩校でも優秀で剣の腕にも優れていたが、勘定方に勤めていたときに仕事のことでしくじり、弟に家督を譲り、漁師小屋に寝泊りするまでに落ちぶれてしまった男の話である。結果はハッピ…

臆病者のための億万長者入門 橘玲

橘玲の本は、何冊か読んでいる。 お金に関したものが多いが、読むと作者独特の言い方に引かれる。この本でもそんな作者の言い方は健在である。 たとえば、「宝くじは、愚か者に課せられた税金」とか「不幸の宝くじ、生命保険」とか。宝くじを金融商品として…

今古探偵十話 岡本綺堂

岡本綺堂は、好きな作家で半七捕物帳はよく読んでいる。 推理ものとしては偶然性に頼り、どうかと思う部分はあるが、江戸情緒は、昨今の時代物では、味わえないもので、当時の雰囲気が出ているので、何度も読んでしまう。 さて、今回は、そんな岡本綺堂の探…

朝鮮戦争論 忘れられたジェノサイド ブルース・カミングス

朝鮮戦争に関して書かれた本はいろいろあるが、アメリカ人によって書かれたアメリカ人のための本だと序で著者は語っている。 朝鮮戦争は、第二次世界大戦やその後のベトナム戦争に比べても印象が薄くて、アメリカ人にとっては、忘れられた戦争だと思われてい…

皇帝フリードリッヒ二世の生涯 塩野七生

塩野七生の本は大体読んできた。 あの長い「ローマ人の物語」全15巻も読んだ。なぜ読み続けてきたかと言えば、自分の歴史好きということが一番大きいだろう。普段は、日本史の本を読むことが多いが、彼女の著作は、見知らぬ国の歴史を書いたものでも何か違…

落花は枝に還らずとも 会津藩士・秋月悌次郎 中村彰彦

秋月悌次郎といってもほとんど知られていないのではないか。私も以前大河ドラマを見て、司馬遼太郎の歴史エッセイの中で取り上げられていたのをどうにか思い出したくらいだ。幕末には、いろいろな有名人がいるが、会津藩というと藩主の松平容保が一番知られ…

ビブリア古書堂の事件手帖5 栞子さんと繋がりの時 三上 延

最初にこのシリーズの第1作を読んだときには、古書をめぐる謎解きということですごく新鮮だったことを覚えている。 ミステリーというと殺人事件が起きなくてはいけないというイメージを持っていたので、古書を題材にした、殺人事件の起きないミステリーとい…

実践 日本人の英語 マーク・ピーターセン

英語の学習は、日本人にとっては、永遠の課題のようである。 英会話学校の看板は、どこに行っても目に付くし、相変わらず、英語が話せるとカッコいいと思っている日本人は、多い。その割には、英語のうまい日本人は、以前と比べて多くなったとは思えない。 …

刑務所わず 堀江貴文

獄中ものである。 獄中ものは、好きで佐藤優や山本譲治のものも読んだことがある。子供のころには、モンテクリスト伯が面白かった記憶がある。 なぜ獄中ものに惹かれるのだろうか。絶対に自分が体験することのない世界を垣間見ることができるのが、その理由…

虚像の道化師 ガリレオ7 東野圭吾

ガリレオシリーズの短編集である。 テレビでも小説でも楽しんでいる。今回のシリーズを読んでいて、以前放映していたのと内容が同じだと気がついた。ただテレビと小説とは内容が多少違うのはやむをえない。小説とテレビとは違うものだと思っているので、それ…

小栗上野介忠順と幕末維新 「小栗日記」を読む 高橋敏

小栗上野介といえば幕末時において、幕府の主戦派として、有名である。 勝海舟などの恭順派からは嫌われていたが、横須賀造船所創設を決意したり、幕府を最後まで支えようという姿は評価されている。 彼の成し遂げたものが維新後に明治政府の発展に役立った…

持たない暮らし 金子由紀子 

いつの間にか部屋の中に物があふれる生活を送っていると、いつかは捨てなくてはと思うのだが、なかなか捨てられないのが現実である。 そんな中、いろいろな「捨てる」ことのアドバイスの本があるが、これもその中の一冊である。確かに読んでみると、なるほど…

江戸300年「普通の武士」はこう生きた 八幡和郎 臼井嘉法

武士というと特別の倫理観を持った人間のように思われるが、小説等で描かれる武士は、特別な存在であろう。 実際の武士は、やはり現代人と同じ生身の人間だったことは、間違いない。 小説やドラマで描かれる武士像は、ある意味では、ファンタジーの主人公で…

もう一つの維新史ー長崎・大村藩の場合ー 外山幹夫

幕末期の諸藩の動きというのは、いろいろ興味深いが、この本の舞台になった大村藩は、よくドラマや映画の幕末ものに出てくる薩摩藩、長州藩に比べるとなじみがないものでしょう。だが、この本によると尊王派と佐幕派との争いが大村という2万7千石の小藩を…

三屋清左衛門残日録 藤沢周平

以前、ヤフーブログで読書日記を書いていたが、中断したままになっていた。 いつか再開したいと思っていたが、今回、はてなブログで再開することができた。 まずは、時代物の古典の三屋清左衛門残日録から。 時代小説の主人公には、なかなか老人はなりにくい…