天下の副将軍 長山靖生

天下の副将軍というと水戸黄門を思い出す人が多いだろう。

だが、幕府の役職には副将軍というのはなくて、副将軍というイメージが定着したのは、江戸の中期だという。
御三家とは言われながら、尾張紀州に比べ、石高が少なかった水戸は、将軍を狙わない代わりに、副将軍という立場になり、キングメーカーとしての地位を得たようだ。
8代将軍選びのときに、その地位が固まった。

 

水戸というと黄門として有名な光圀のほか、名の知られた藩主としては、幕末の斉昭がいる。
実際他の藩主は、ほとんど知られていない。
この本もこの二人を中心に書かれている。

 

幕末に興味があるので、幕末当初は、活躍していた水戸藩が途中からすっかり歴史の動きから遅れてしまい、明治になって残った有名人は皆無という状況の謎を知りたかったので、この本は面白く読んだ。
内紛により有為の人材を失ったことが大きな理由だった。
過激派セクト内ゲバのようなものである。
内紛は、本当に悲惨なものであり、主流派が反主流派になり、また交代し、その間に目ぼしい人材が、殺されてしまったのだ。

 

明治時代になって、新政府は、維新に功のあった水戸藩から人材を登用しようにも、人材はほとんど残っていなかった。
他の藩でも内紛はあったが、有為の人材は残った。

水戸藩には、残らなかったということは、それだけ内紛が激しく、お互いに憎しみあっていたのだろう。
何か読んでいて、水戸藩の悲しさが伝わってくる本である。