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ぼくは猟師になった 千松信也

「りょうし」というと魚を獲る漁師のほうを思い浮かべる人が多いにちがいない。

わたしもそうであった。
だが、この本の著者は、山中のイノシシやシカを罠で獲る猟師である。
なんか猟師というと、いまどき猟師なんかやっている人がいるのかな、という半信半疑な気持ちで読んだ。

だが、この本によると有名国立大学を卒業し、猟師に魅かれ、運送会社に勤めながら、冬場の狩猟期にしているということである。
なんかしっかりしているなあ、という印象だ。
それに具体的に猟のやり方や肉の裁き方が書かれていて面白い。
子供のころに読んだロビンソン漂流記や15少年漂流記を読んで、わくわくしたころのことを思い出した。
暖房が薪ストーブで周りの倒木を集めてきてなんていうのも楽しい。

この本を読むと自分も猟師になれる気がするのだから、少年や少女のころ、そんな漂流記譚に夢中になった人間には、たまらない本である。

だが、読み終わって、現実に戻ると猟師だけでは生活できないことがわかる。
狩猟期は決まっているし、いつも獲物が獲れるわけではない。
何か定職を持ちながら、猟をすることになる。
それに都会に住む人間にとっては、近くにイノシシやシカがいる山はない。

だから結局は、本を読んで、つかの間のわくわく感を味わっただけで終わってしまいそうである。

テレビでひとり農業という番組がある。
不定期の放送だが、都会育ちのテレビ局員が田舎の住み、農業をするというものである。
これもこの本を読んだときに感じるわくわく感がある。
米を作ったり、野菜を育てたりする。
都会に住む人間にはできないことだから、見ているのは楽しい。
だが、正直、労働は大変そうである。

この本を読みながら、そんなテレビ番組を思い出した。
やはり本を読むだけが一番楽しいのかな、などと思った。
でもきっとこの本を読んで、猟師になりたいって、思う人は絶対いるんだろうな。