読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

考証要集 秘伝 NHK時代考証資料 大森洋平

ノンフィクション(歴史)

時代考証の本である。

時代考証というと江戸期以前のものという印象があるが、昭和の戦争期のもののように比較的最近のものもある。
NHKの時代考証の担当者の書いた職員向けのものがベースになっている。

 

これを読むと江戸時代のものが一番多いが、現在使っている言葉が比較的最近のものだということに驚かされる。
例えば、「遺体」とか「印象」といった言葉が現代語だということがわかる。
明治期以降に大量に生まれた漢語である。
ほかに有名な例だと、「演説」も今の意味で使うようになったのは、福沢諭吉の発案だという。

 

確かに江戸期が舞台のドラマで以上のような言葉が出てきたら、ちょっと違和感を感じるかもしれない。
だが、反面、「遺体」を「むくろ」とか、言われるといったい何のことだか、わからない人が出てくるのも確かである。
現代人にもわかる言葉で言い換えるのが難しいと感じた。

 

また実際のところ時代劇を本当に時代考証に沿って、リアリズムでやると返って不気味なものになるのも間違いない。
清須会議」という映画で戦国一の美人といわれた信長の妹が眉毛を剃り、お歯黒をつけているのを見たが、ほとんど化け物のようであった。
当時の人間の美的価値観と現代人とは違うから当時は、違和感がなかったのだろうが、現代人にとっては、かなり不気味である。
だからテレビの時代劇ではほとんどお歯黒はしていない。
だが、これに関しては、時代考証に細かい時代劇ファンからは、何のクレームも出てこないだろう。
時代考証通り、お歯黒をしたら、返ってクレームが来るのではないか。

 

以前NHKで放送していた「タイムスクープハンター」というドラマは、時代考証は、リアリズムでやっていたが、特に江戸やそれ以前の女性の化粧が、正直言って、かなり不気味であった。
現代の感覚と、大分違う。

 

筆者は、時代物は、「完全な史実ではないフィクション」だと述べている。
何かこの言葉にすべてが集約されるような気がする。
あまり細かいところにこだわると面白くなくなるし、現代人が考える「こうだったら、いいなと思えるフィクション」が時代劇の魅力なのだろう。

 

つまり時代考証は否定しないが、まったくリアリズムにもおちいらないところが、落としどころということか。
ところで「落としどころ」って、いつの言葉なんでしょうね。
時代劇では耳にしないけれど。