日本史の謎は「地形」で解ける 竹村公太郎

歴史の本を読むのは好きだが、英雄史観とでもいうのだろうか、歴史上の人物にスポットライトを当てたものがほとんどである。

戦国時代も幕末もそうだ。
そういう本は、読んでいて本当に楽しい。

 

だが、今回の本は、歴史というのは、地形という環境から影響を受けているというものだ。
以前、ジャレッド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」を読んだときに感じた、環境が大事だというこということに似ていると思った。

 

この本は、日本史の歴史上の出来事を地形という面から分析したものである。
関が原の勝利のあと家康はなぜすぐ江戸に戻ったかとか等、面白いテーマが詰まっている。
無論、なるほどと納得できるものもあるが、ちょっと眉唾と感じるものもある。

 

一番、納得したもののひとつは、大阪にはなぜ緑が少ない、のかというものだ。
東京都比べると圧倒的に少ない理由が大阪が町人の町であって、権力者の町ではなかったからという解説は、説得力があった。
確かに東京の公園は、権力者の持ち物だったものがほとんどだ。
新宿御苑にしても、日比谷公園にしても元は大名の屋敷だった。
大阪には、そのような広大な土地を持てる権力者はいなかった。

 

ちょっと納得できないのは、忠臣蔵の義士へは、江戸幕府の配慮があったのではないかというものだ。
吉良家に対しては、幕府の思いがあり、それが義士への配慮につながったというのだ。
これは、いろいろなことからみても、ちょっと話としては、面白いが……、程度の内容である。

 

ただ、全体を通してみると歴史上の事実が多少なりとも地形から影響が受けていたことを認識させられる本である。