潮鳴り 葉室麟

 

葉室麟の小説を読むのは、初めてである。
九州の小藩の藩士の物語である。
藩校でも優秀で剣の腕にも優れていたが、勘定方に勤めていたときに仕事のことでしくじり、弟に家督を譲り、漁師小屋に寝泊りするまでに落ちぶれてしまった男の話である。

結果はハッピーエンドになるのだが、何か一昔風の時代物を読んだような気がした。
別に悪く言っているのではなく、ほめ言葉である。
一気に読んだ。
面白いのだ。
予定調和的なストーリー展開には、安心感がある。
エンターテインメントとしての時代劇の魅力は、その結末がわかっているのを知りながら、その過程の物語の面白さを楽しむところにある。
いまは、テレビでは、もう時代物の放送は少なくなったが、以前は毎日のように放送されていた時代物のファンの望んでいたものは、そのようなものだったと思う。

そんな時代ものが復活したような作品である。
無論、類型的な人物やストーリー展開がないとはいえないが、お約束だと思えば、納得できるし、十分に楽しめる。
現代ものでは成立しないストーリーや人物が登場するのもある意味では、ファンタジーに近い時代物だからである。

葉室麟は他にもいろいろ作品を書いているようである。

他の作品も読んでみたくなった。