朝鮮戦争論 忘れられたジェノサイド ブルース・カミングス

朝鮮戦争に関して書かれた本はいろいろあるが、アメリカ人によって書かれたアメリカ人のための本だと序で著者は語っている。

朝鮮戦争は、第二次世界大戦やその後のベトナム戦争に比べても印象が薄くて、アメリカ人にとっては、忘れられた戦争だと思われているようだ。
だが、実際には、推定300万人もの命が失われた戦争であって、現在まで戦争は終結していなくて、単に休戦しているだけである。

 

国連側に立てば、共産側の残虐行為がアメリカを中心とした国連介入の理由になっているが、実際には、韓国側による残虐行為も共産側以上にあったようだと著者は、いくつかのエピソードを紹介している。
この本では、主に韓国側からの資料によって、取材しているようで韓国側内の残虐行為が主として書かれている。
戦争は、両面から取材すべきではあるが、ちょっと片手落ちのような気がする。
無論、共産側からは、十分な取材ができないので、やむを得ない部分もあるのかもしれないが、少なくとも努力はすべきであろう。

 

読んで思ったのは、戦争は始めるのはやさしいが、終えるのがむづかしいということである。
戦争を始めた金日成にとっては、当初は、1ヶ月くらいで終えるつもりだったようであるが、米軍を中心とした国連軍の思わぬ介入で釜山を落とせず、仁川上陸で形成は逆転するが、中国が介入し、その後戦線は膠着する。
何か太平戦争を始めた日本を思わせる。
日本の場合は、天皇の「御聖断」によって終戦が決定されたというが、それでもいろいろ抵抗はあったようだ。

 

朝鮮半島は、今後どうなるかわからない。
分断されたまま続くのか、統一されるのか。
だが、その遠因は、朝鮮戦争にあるのは、確かである。