ノンフィクション(歴史)

旗本の経済学 小松重男

お庭番だった川村修富の手留帳(日記)をもとにして彼の人生を追ったものである。 時代劇の影響で、お庭番というと何か忍者のイメージがあるが、実際は、幕府の役人の一人である。だから、スーパーマン的な活躍が無論あるわけでもなく、淡々と事務をこなして…

考証要集 秘伝 NHK時代考証資料 大森洋平

時代考証の本である。 時代考証というと江戸期以前のものという印象があるが、昭和の戦争期のもののように比較的最近のものもある。NHKの時代考証の担当者の書いた職員向けのものがベースになっている。 これを読むと江戸時代のものが一番多いが、現在使…

坂本龍馬の「私の履歴書」 八幡和郎

坂本龍馬といえば、幕末でももっとも有名な人物のひとりである。 いろいろな本が書かれているが、この本は、この虚像の多い人物の実像に迫ったものである。履歴書風に年代に沿って、真実の龍馬を確実な資料で追っていったものである。ただ、龍馬英雄史観に反…

西周夫人升子の日記 川嶋保良

西周というと幕末期から明治の人でいくつかの西洋の概念を翻訳したことでしか知らなかった。 例としては、芸術、理性、科学、技術などである。明治期にそういった今までになかった概念を日本語に翻訳できたから日本が発展できたというのはよく言われることで…

天下の副将軍 長山靖生

天下の副将軍というと水戸黄門を思い出す人が多いだろう。 だが、幕府の役職には副将軍というのはなくて、副将軍というイメージが定着したのは、江戸の中期だという。御三家とは言われながら、尾張、紀州に比べ、石高が少なかった水戸は、将軍を狙わない代わ…

日本史の謎は「地形」で解ける 竹村公太郎

歴史の本を読むのは好きだが、英雄史観とでもいうのだろうか、歴史上の人物にスポットライトを当てたものがほとんどである。 戦国時代も幕末もそうだ。そういう本は、読んでいて本当に楽しい。 だが、今回の本は、歴史というのは、地形という環境から影響を…

朝鮮戦争論 忘れられたジェノサイド ブルース・カミングス

朝鮮戦争に関して書かれた本はいろいろあるが、アメリカ人によって書かれたアメリカ人のための本だと序で著者は語っている。 朝鮮戦争は、第二次世界大戦やその後のベトナム戦争に比べても印象が薄くて、アメリカ人にとっては、忘れられた戦争だと思われてい…

皇帝フリードリッヒ二世の生涯 塩野七生

塩野七生の本は大体読んできた。 あの長い「ローマ人の物語」全15巻も読んだ。なぜ読み続けてきたかと言えば、自分の歴史好きということが一番大きいだろう。普段は、日本史の本を読むことが多いが、彼女の著作は、見知らぬ国の歴史を書いたものでも何か違…

小栗上野介忠順と幕末維新 「小栗日記」を読む 高橋敏

小栗上野介といえば幕末時において、幕府の主戦派として、有名である。 勝海舟などの恭順派からは嫌われていたが、横須賀造船所創設を決意したり、幕府を最後まで支えようという姿は評価されている。 彼の成し遂げたものが維新後に明治政府の発展に役立った…

江戸300年「普通の武士」はこう生きた 八幡和郎 臼井嘉法

武士というと特別の倫理観を持った人間のように思われるが、小説等で描かれる武士は、特別な存在であろう。 実際の武士は、やはり現代人と同じ生身の人間だったことは、間違いない。 小説やドラマで描かれる武士像は、ある意味では、ファンタジーの主人公で…

もう一つの維新史ー長崎・大村藩の場合ー 外山幹夫

幕末期の諸藩の動きというのは、いろいろ興味深いが、この本の舞台になった大村藩は、よくドラマや映画の幕末ものに出てくる薩摩藩、長州藩に比べるとなじみがないものでしょう。だが、この本によると尊王派と佐幕派との争いが大村という2万7千石の小藩を…